宿泊施設・飲食店 プロデュース
京都市左京区には、いまも数多くの伝統行事が受け継がれていますが、担い手の高齢化や後継者不足が大きな課題になっています。私たちは「左京・地域ゆかりの文化実行委員会」が実施する公募型プロポーザルにて、左京区の伝統文化・伝統行事のPRに向けた展示物作成及びPRイベント実施業務を受託し、左京の伝統行事を次世代へ継承するための企画・制作およびディレクションを行いました。
私たちが提案の際に留意したのは、「行事そのもの」の記録や保存を主目的とするのではなく、「そこに携わる人の思い」にいかに焦点を当てるかという視点です。具体的には、行事の概要を説明するにとどまらず、そこに関わる担い手一人ひとりの個人的なストーリーを深く掘り下げることで、伝統行事をより身近で「自分ごと」として感じてもらうことを重視しました。
このようなアプローチにより、地域住民だけでなく、広く伝統行事に対する共感と関心を喚起し、地域内外の新たなつながりや、持続可能な担い手育成のきっかけを創出することを目指しました。
2023年には大文字送り火、久多花笠踊、吉田木瓜大神の剣鉾差し、2024年には石座神社例大祭を取材し、伝統行事の担い手に焦点を当てたドキュメンタリー映像を制作しました。
取材対象はベテラン層だけでなく、初参加の若手やボランティアの学生など、これまで注目されることが少なかった人々にもインタビューを行い、行事への思いや苦労、得た経験を丁寧に掘り下げていきました。
伝統行事が「遺産」ではなく、世代を超えて引き継がれる「身近な地域の営み」であると感じられるような構成とし、視聴者が担い手のリアルに触れ「次は自分も参加してみたい」と思える導線づくりを重視しました。
より多くの人が伝統行事に触れられる機会として、上映会とトークイベントを企画しました。従来、こうした行事に関するイベントは区役所の会議室などで開催されることが多く、参加のハードルが高い面もありました。そこで今回は、左京区内のカフェスペースを会場に選び、よりカジュアルで開かれた雰囲気づくりを意識しました。
2024年度に実施したイベントでは、伝統行事に関心が薄い層にも立ち寄ってもらえるよう、地域の飲食店や植物店など複数の事業者と連携し、関心の入り口となる仕掛けを設けました。
当日は、子連れの家族から高齢の方まで幅広い世代が来場し、定員を大きく上回る盛況となりました。上映後のトークでは、映像に収まりきらなかった担い手の思いや背景が語られ、来場者との活発な質疑応答も交わされました。



本プロジェクトでは、これまで表に出ることの少なかった担い手一人ひとりのストーリーに光を当てることで、「伝統行事=地域の年配者が支えるもの」という固定観念をやわらげ、より多くの人にとって身近に感じられるきっかけをつくることができました。
地域の事業者を巻き込んだイベント開催によって、伝統行事にこれまで接点の少なかった世代を含む多様な世代の参加が実現し、「初めて伝統行事に関心を持った」「今後も続けてほしい」といった声が多く寄せられました。こうした反応からは、潜在的な関心の芽を育てていく継続的な取り組みの大切さが、あらためて浮かび上がりました。
また、区役所がカフェスペースという親しみやすい場を活用して発信を行ったことも、行政と地域の新たな関係性を築く一歩となり、伝統行事の継承に向けた、柔軟で開かれた姿勢の重要性を示す機会となりました。

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